三河の教賢と伊勢の空賢について

今回は三河(愛知)の親鸞学徒である教賢と、伊勢(三重)の空賢について紹介します。

2人は「蓮如上人御一代記聞書」に登場しており、当時「東海道の二賢」と呼ばれていたといい、重要なお弟子だったと考えられています。

目次

『蓮如上人御一代記聞書』の内容

三河の教賢、伊勢の空賢とに対して、仰せに、南無といふは帰命、このこころは御たすけ候へとたのむなり。この帰命のこころやがて発願回向のこころを感ずるなりと仰せられ候ふなり。

出典:『蓮如上人御一代記聞書』

意訳:三河の教賢と伊勢の空賢に対して、蓮如上人がおっしゃいました。

「『南無』というのは帰命ということで、この心は『阿弥陀仏の本願まことだった』と阿弥陀仏の本願があてたよりになって自力の心がなくなったことである。この帰命の心は、そのまま阿弥陀仏からいただいた発願回向の心である」とおっしゃったということです。

先ほど紹介した蓮如上人の教導(「南無は帰命」の教え)がいつ行われたのかは、正確にはわかっていません。

しかし、明応7年(1498年)4月23日に重要な出来事がありました。この日、教賢と空賢の2人は、蓮如上人が危篤状態だという知らせを聞いて、急いで大坂(現在の大阪)へ駆けつけました。そして4~5日間、病床の蓮如上人のそばに付き添って看病したのです。

この時、蓮如上人から2人に対して「御文章第4帖第14通(一流安心章)」が授けられたと、伊勢国香取の法泉寺に残る伝承として記されています。

三河の教賢

三河の教賢がどのような人だったのかは、ほとんど資料が残っておりません。

ただ他の『蓮如上人御一代記聞書』に「三河の国より、浅井の後室」とあり、浅井の後室の夫が教賢ではないかとも言われています。

「浅井の後室」は愛知県西尾市正光寺・宿縁寺にゆかりのある人です。

伊勢の空賢

空賢は、伊勢国香取の法泉寺がゆかりの寺といいます。

三重県いなべ市の行順寺に残る記録には、蓮如上人がこの地を訪れた際、別れを惜しむ空賢(当時の名は正玄)に対し、「虎尾の御名号(とらおのごみょうごう)」と呼ばれる「南無阿弥陀仏」の書を形見として与えた、という逸話が記されています。

夫より当寺へ御入り在せられ。是成るは行部井此所にて四日四夜の間だ。御逗留在せられ。蓮如上人正玄へ対し。南無というは。帰命也。……御教化在せられ。今は早厭ま申すなりと仰せられければ。空賢正玄別れを悲めば。立処に蓮如上人虎尾の御名号を御染筆在せられ。御形見に譲らせられ。

出典:『蓮如上人御旧蹟御絵伝差図伝』

意訳:その後、法泉寺にお入りになられた。こちらで4日4夜の間、ご滞在された。蓮如上人は正玄(空賢の俗名)に対して「南無というのは帰命である」と教え導かれた。「もうそろそろおいとまを申し上げよう」と仰せられると、空賢(正玄)は別れを悲しんだ。その場で蓮如上人は虎尾の御名号を筆で書かれ、形見として授けられた。

現在の愛知県東部にあたる三河国と三重県の伊勢国は、困難な布教の地の一つであり、蓮如上人のご苦労は並大抵のものではありませんでした。

他宗派と異安心が根強い地域でのご布教

当時の三河・伊勢地方は、浄土真宗のうち、特に高田門徒(専修寺派)や佛光寺派の勢力が絶大でした。

蓮如上人は、既存の寺院や信徒からは、激しい反発や警戒の目で見られましたが、親鸞聖人の教えを正しく伝えるために何度も足を運ばれたといいます。

また「秘事法門」などの異安心もはびこっていました。

そのため「南無阿弥陀仏」の六字や「帰命」の真意を門徒たちへ丁寧に伝えていかれました。

編集後記

今回は、東海地方で活動していた蓮如上人の弟子である教賢と空賢を通して、蓮如上人の苦労について紹介しました。

二人は、蓮如上人から直接教えをいただくために遠く三河や三重から京都へ足を運び、また上人がご病気と聞けば、その身を案じてすぐさまお見舞いに駆けつけました。そのひたむきな姿からは、師を思う深い敬慕の念が伝わってきます。

蓮如上人は、どのような時でも、常に親鸞聖人が明らかにされた阿弥陀仏の本願一つを、懇切丁寧に説き続けられました。

その真摯なお姿に触れた教賢と空賢は、いただいた教えの灯火を胸に、故郷の愛知や三重で多くの人々に伝えていったことでしょう。

私たちが今、親鸞聖人の教えに触れることができるのは、決して当たり前のことではありません。

他の宗派の勢力が強い土地や、間違った教えが広まっている中で、命をかけて真実を伝えようとした蓮如上人をはじめとする多くの親鸞学徒の、並大抵ではない苦労があったからこそです。

先輩の親鸞学徒のご苦労に感謝し、浄土真宗親鸞会名古屋会館で、真剣に阿弥陀仏の本願を聞かせていただきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次